[コメント] キャプテン・フィリップス(2013/米)
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フィリップス船長が助かることは観る前に知ってました。なので、そこは実はさほど不安ではなかったのですが、音楽の効果も含め、”緊迫感“を盛り上げる演出がとにかくうまかった。それだけでもほぼ2時間もっているという印象です。
賊の目を盗んで配電室に忍び込んだり、船員たちが暗闇を利用して賊に反撃したり、といったシーンもあるのですが、これは何が起きているのか分かりにくかった。特に賊と船員の位置関係。船内で、立体的な空間であることもあるのですが、必ずしも分からせようと描いていなかったと思います。
もう一つ分かりにくかったのは、後半の軍事救出作戦の部分。海軍の作戦とSEALS の作戦とが、どう連係していて、どう連係していないのか、よく分からなかった。これも敢えて錯綜させたのでしょう。
表面的なストーリーとは別に、“主導権の奪い合い”ということが描かれていると思いました。主導権と言って分かりにくければ、その場の状況を支配する力、とでも言うような。そしてそこにおいては、やはり“武力”というものが有効に機能する。なにしろ、あんな簡単なはしご一つで、巨大な貨物船が、わずか4人の武装集団に制圧されてしまうのですから(まあ、結局貨物船を制圧しきれませんでしたが)。
この“状況の支配力”のヒエラルキーの、圧倒的な最上位に位置するのがSEALS でした。もう、大人と子どもぐらいの差です。米海軍の戦艦の艦長ですら、SEALS の到着とともに、指揮権を剥奪されてしまう(“移管されて”が穏当な表現でしょうけれど)。
ここにある種の“頼もしさ”があるのは確かです。
でも例えば、あの救命艇の小さな窓越しに、3人の標的を同時に捉える瞬間をただひたすら待つ、という作戦の実効性に、シロウトとしては疑問を抱きます。
また、目の前にいた3人の人間が瞬殺され、その血を(場合によっては脳漿も)浴びたフィリップス船長の心理的ダメージはいかばかりだったでしょうか。助かったんだからいいじゃねえか、と言われりゃその通りで、反論などできませんが、ここで救出される側の心理というのは、まったく考慮されないわけです。
こう考えると、頼もしさとは別に、その強制性、圧倒性に、しらじらしい思いが生じてきませんでしょうか。
だとすると、実に皮肉なことに、あの4人組だけがこの強制的かつ圧倒的な支配力に抗ってみせたことになります。結末は死でしたが、抗ってみせたことに対し、拍手喝采とはいきませんが、口笛の一つぐらいは吹いてやりたい思いがします。
85/100(13/12/14見)
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