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[コメント] ゼロ・グラビティ(2013/米)

一行で済んでしまうようなプロットを映像体験だけでみせきってしまった。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







だいたい1〜3時間という尺の中で、ひとかたまりの物語を楽しませる映画というフォーマットは、時代や技術の変化とともに決められた時間の枠の中で「時間・空間の描き方」というものも変わってきた。極端にいえば映画という演劇の後発のフォーマットは、演劇が「舞台と観客」という形から、その境界を崩し、観客が演劇の中の人となり物語を体験するような指向を目指してきたと思う。そして一昔前ならできなかった、その物語の場の空気とか現実感が、映画作家たちの表現欲への試行錯誤と、受け手の観客の受容スキルの向上で、その表現方法を日進月歩させてきた。そういう点で、間違いなく「次の映画」の手ごたえを感じさせてくれる。

たとえば、主人公が、重力のない(踏ん張りのきかない)中で、体を上下左右に揺さぶられながら宇宙ステーションの尖端のハッチに向かうまで(の遥かな)道程を主観だけで撮ってしまうような、そういう場面の描き方が、部分的な役割ではなく、それを主体とした作品となっている。こういった方法で、これまで映画が描いてきたホラーやミステリーやアクション、美しい情景や感傷が、また違った見せ方で楽しめるのではないか、と考えるととてもワクワクしてくる。

技術面でもうひとつ大きかったのが3D。自分は3DIMAXで鑑賞したのだが、このスタイルは常々カット割りの激しいモンタージュ的ないわゆる映画らしい表現には向かないと思っていた。その場にいるような臨場感と、モンタージュという「偽りの連続性」という表現が食い合わせが悪いように思っていた(だからタルコフスキーのような映画が一番向いているんじゃないかと思っていた)。だから『アバター』で、これからは3Dの時代だ、とか言われるほど、そんな気はしなかったのだが、本作で初めて3Dの真価を味わった感じがする。これは『アバター』の頃の、平面のレイヤーが間隔をあけて並んでいるようなふうにしか見えなかったのが、ヘルメットやヒロインの体など、曲面が美しく見えるような技術の格段の進歩によるところが大きいと思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)pori[*] ロープブレーク[*] ナム太郎[*] サイモン64[*] 3819695[*] けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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