[コメント] 忍者武芸帳(1967/日)
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1960年代当時、安保闘争に明け暮れる日本では一人の漫画家の作品が盛んに読まれていた。白土三平の描く「カムイ伝」がそれ。ガロに連載されていたこの作品は莫大な影響力を当時の青年にもたらしたと言う。この「カムイ伝」は権力者側の忍者であるはずのカムイが、飢えて虐げられている民衆を知ることによって、抜け忍となる話だが、この作品にはカムイの他にもう一人主人公正助がおり、中心はむしろそちらの方。徹底して民衆の立場で、彼らの命を救おうと必死に活動している人物。この二人の行動が主軸なのだが、その視点は徹底して民衆の側にある。
その同時代に白土が描いた作品は数多いが、特にこの時代の白土三平作品の特徴でもあり、その部分こそが受け入れられた理由とも言えよう。どれも視点は変わらずにとにかく徹底して虐げられる民衆の目から見た戦国時代が描かれ、それが1960年代の世相に見事に合致していたために、絶大なる支持を受けた。
それに目をつけた大島渚監督がその中の一作「忍者武芸帳」を映画化したのが本作だが、ここでは実験的な試みがなされている。
本作はアニメーション出なければ実写でもない。静止画を連続させ、そこに音と台詞をかぶせるという手法を使ったのだ。いわば紙芝居のようなもので、映画としては異端的な手法だが、少なくともこれ以上の漫画原作の映画化はあり得ないのは事実。
元の物語が熱いだけに、大島監督は自分を抑えても熱い。この時代の大島監督はやっぱり凄いと思わされた作品だった。
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