[コメント] 県警対組織暴力(1975/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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実は初見の際、フィルムの状態が大変悪くストーリーを把握しきれない部分があった。
それで今回、ビデオで再見したのだが、あらためてその脚本の完成度の高さに驚嘆した。
本作には無駄なシーン、エピソードが全くない。
序盤で文太にダンヒル分捕られる松方配下のチンピラ。彼は序盤では、尋問中失禁してしまう程の小心者だったが、後半でガサ入れを誘導した組員を刺殺する(こんにちわ赤ちゃん♪印象的でしたよね)。ガタガタ震えながら実に無様ではあったが。路地?に逃げ込んだ彼を偶然、文太が発見する。ここで苦悩する文太のアップショットが挿入され、このエピソードが6年前の出来事として語られた松方との出会い(*組長殺しの隠滅)と対応していることが告げられる。6年前は震えていた松方も今では組長代理。松方に決別された文太は、このチンピラに未来を託そうとでも思ったか彼を見逃してしまう。(*この行動が憐憫(つまりヒューマニズム)のみに起因するものでないことは作品を追う上で非常に重要。)この策はしかし、梅宮警部にすげなく看破されチンピラは逮捕される。警察署でチンピラは文太に向かって「卑怯者」と食って掛かるわけだがこの時の文太の気持ちたるやどうだろう。ここで文太と観客が共有するフラストレーションが文太を「潜入」せしめ松方を「射殺」せしめたのであろう。全くもって見事としかいいようのない心理描写である。
物語は文太が盟友・松方を射殺する(アノ)悲劇を持っても、その回転を留めず最期に文太は(派出所に配置換えの挙句)暗殺されてしまう。一面では正義を謳っていると思われた梅宮も、実は全くの偽善者でしっかり再就職していることがアナウンスされる。正義も仁義ももはや存在しないことを皆まで語り尽くしたところで「終」の文字がようやく刻まれる。
痺れる。
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