優れて映画的なファクタである「動物」と「労働」をスムースに学園ドラマに導入できる点でまず企画に勝算ありといったところだが、過去作とはいささか趣きが異なった雇われ仕事のように見えても、吉田恵輔の作劇は喜劇の誇りを保ちつつ生きることの苦みから目を背けない。ベーコン・パーティや馬場設営のシーンにおける仲間たちの「集合」カットなど勘どころを外さない演出手腕にもやはり一定の信頼が置ける。また、洋の東西を問わず商業映画において広く横行しているクライマクスの「引き延ばし」は決して褒められたものでない場合が少なくないが、ここでは輓曳競馬という「遅さ」の競争でもってそれをむしろ必然の演出と化し、ウェルメイドを越えた挑発的な感動を形成するだろう。

ここでの上島竜兵、さらに前作『麦子さんと』におけるガダルカナル・タカもそうであったように、決して俳優業が盛んではないベテラン笑芸人をさりげなく脇に配置する仕方に曰く云いがたい妙味がある。吉田作品は押し並べてキャスティングがよい。