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[コメント] ワレサ 連帯の男(2013/ポーランド)

立役者のひとりである老匠の愉し気な回想。重圧ばかりの過去作からの解放感が伝わってくる。歴史を創ったワイダにだけ創作が許された痛快活劇。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この解放感を、ワイダの奥さんのアグニェシュカ・グロホウスカと分かち合っているのがとてもいいし、パンクロックの引用でもって若い世代と分かち合おうとするスタンスもいい。「合図を待っている」、いいリリックだ。そして同世代の労働者たち。私的ベストショットはバスの女性運転手が「今からストよ」と満員のバスを路上に乗り捨てて連帯ストへ走る件。見捨てられた客がこれに声援を送っているのがいい。

こういう作品は細部の穿ちが肝だが、さすがにネタが山のように出てくる。官憲が警棒でまず狙うのはモモとヒザ、倒れてから腎臓を狙うとのこと。ロベルト・ヴィエツキーヴィッチのワレサ造形は、この愛すべき、仲間のために黙っていられない、ハッタリ込みの人物を画面に定着させている。「人間らしくあれば大丈夫だ」とは名言。カトリックへの信頼、外国人記者の重要性(近年の韓国映画でもこの視点は顕著だ)を訴えているのがとても興味深い。

なお、Wikiによれば、グダニスク造船所は民主化後民営化されたが、経営が悪化し大規模なリストラの後倒産、再建されたが経営は苦しいらしい。労組による共産主義の打倒、とは20世紀屈指の倒錯喜劇だったが、打倒で終わりではない。歴史は連綿と続く。ワイダがこれをどう見ていたのかと思うと心が痛む。これら課題は、有為のパンクス出身者が引き継いでいるに違いない。

(評価:★5)

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