[コメント] 弾丸大将(1960/日)
主人公は、皆から不発の善ちゃんと呼ばれる、南廣で、とびっきり明るい利発なキャラだ。彼の仲間には、木村功や加藤嘉、織本順吉らがいるが、前半は織本が目立つ。米軍兵士たちの前で、南廣と八百長柔道試合をするシーンがあったりする。彼らは、米軍基地の演習場に落ちている、薬莢や不発弾を拾って金に換え、生活をしている、云わば在日米軍に寄生したバタ屋だ。しかし、人よりも沢山拾うため、軍事演習中から現場にスタンバイし、終了直後に弾を漁りに行く、という命がけの弾拾いなのだ。
善ちゃん−南廣の住処は飲み屋の2階。こゝの娘、しずちゃん−春丘典子が、彼のオンリーだ。しかし、本作のヒロインは、淡島千景で、演習場での事故により、弾拾いの夫を亡くした未亡人だ。南廣は、淡島の家に線香を上げに入ったシーンで、すぐに一目惚れしてしまう。彼の見た目ショットで淡島を撮った画面が、イヤらしくていい。このような、丁寧な演出の機微を見せるシーンがいくつもある。
例えば、夜、家で不発弾処理をする木村功のところに淡島が訪ねてくる場面。このシーンの描写、カット割りも、とても丁寧で、二人が思い合っていることがよく伝わる。あるいは、淡島が米兵と出会う霧の林のシーン。こゝは出色の出来でしょう。この演出があるから、私は本作を傑作と云ってはばからない、という部分なのだが、霧の中での米兵の登場が、数カットのディゾルブで表現されるのだ。なんという特別感のある登場シーン。二人が手を繋いで歩くロングショットもいい。そして、この後、この米兵がきちんと重要な役割りを担っていく、というカタチでプロット展開に反映されるのも満足度が高いのだ。
さて、米軍基地反対運動に対抗し、南廣が代表になって基地存続、演習存続を訴えて行動する、というアイロニカルな部分も興味深いのだが、結局、米軍基地は自衛隊の演習場に取って代わる。米軍が自衛隊に代わっただけで、弾拾いを続けられると高をくくっていた南廣たちに、演習場の自衛官は「薬莢も国庫だ」と云い、厳に立ち入り禁止にされてしまうのだ。さて、南廣はどうするか、というのがラストシーンだが、このラストの収め方も、これ以上ないと云うべきカッコいい見せ方だと思う(というのは、多分に私の好みの問題かもしれませんが)。
#米軍士官が、薬莢なんかチョコレートの包み紙みたいなものだ、これが日本では金になるのか、と云うシーンがある。
#保険屋の織田政雄、村長の東野英治郎、巡査の三井弘次、警察署長で松本克平、それぞれワンシーンのみの登場。逐次投入される。ゲスト出演のようで楽しい。
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