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[コメント] 流れる(1956/日)

成瀬作品はまだ10本程度しか見てないけど、これが最高傑作と言ってしまってもいいんじゃないかと思う。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ちょっと考えられないくらい贅沢な作品で、頭がクラっとする。まずはもう問答無用だけど、キャストが奇跡的。邦画ファンにはたまらんものがあります。終始ニヤけっぱなし。誰も彼もがパーフェクトに個性を発揮し、与えられたイメージをパーフェクトに演じている。ここまで個性がぶつかり合うと、お互いを殺してしまうんじゃないかという心配もあるけど、それも全くなし!全てのキャラが最大限に活きている。凄すぎる。

特に私は山田五十鈴!気位の高いちょっとイジワルなイメージがあったんですが、斜陽をむかえる芸者屋の清貧な佇まいと見事にマッチしていて、なんとも艶っぽい。

また、着物の着方もみどころ。特に山田五十鈴が久しぶりに小紋(かな?)を着たシーンでは、何故か帯締がズレてるんです(お太鼓も若干傾いてた)。こりゃ次のカットできっと直っているぞと思いながら見ていたんですが、直っておらず。結局家に帰ってくるまで帯締はズレたままでした。なんでなんだろうって考えてたんですが、そのズレた感じがまた落ちぶれ感を増幅させていて情けなくなるんですよね。そういう演出だったのかは分からないので個人的な思い込みですけど、なんだか感心してしまいました。

また三味線に長唄のシーンも素晴らしいです。特に杉村春子と合わせて三味線をかき鳴らすシーンは圧巻!芸達者もいいところ!鳥肌モンですよ。それにあのシーンに居合わせた他の役者陣の表情も良いんです。芸妓のたまごみたいな女の子たちの、あっけに取られたような、恍惚としたような顔。あの表情があるから、鑑賞者である私にさらなる臨場感が覆いかぶさってきます。また、杉村春子が電話で三味線のリズムをおさらいするシーンもとても好き!あれはまさかとは思うがアドリブか?笑いました。

芸妓を扱った映画は幾度となく見てきたけれども、今のところこれが一番面白い!田中絹代演じる女中の存在が、地味ながらも作品に締まりを持たせていたんだと思うな。

しかし素晴らしい!男不要の、徹底的な女目線。溝口健二じゃこうはいかない。(溝口は大好きだけどね!)

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09.06.16記(09.06.10DVD鑑賞)

(評価:★5)

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