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[コメント] 恋人たち(2015/日)

救われないはずなのに救われる映画だ。
ロープブレーク

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







接点の無いように見える三人の物語は、妻を亡くした男を中心に、直接に(=弁護士と)或いは間接に(=大根の桜漬け入り仕出し弁当及び白い粉袋による主婦と)関係性を持つ。それが作劇としてあまり成功しているとは思えないが(必然性を感じないので)、個々の話はそれを上回るパワーを持つ。勇気が無いこと(男)、ハンデがあること(LGBTである弁護士とか片腕の上司とか)、才能が無いこと(主婦)、が結局は生きていくことを肯定する理由になっている。こう書いてしまうと、親鸞の説いた悪人正機そのものなんだが、そんな抹香臭い話しじゃなく、今の日本のリアルな「映画」に結実させたのは、監督とキャストとスタッフの力、執念、意地、怨念、慈愛…なのだろう。誰ひとり救われていないはずなのに観る者が救われる、そんな映画になっている。

以下、蛇足です。 個人的には、「すいません、俺、正直、オリンピックなんてどうでもいいっすよ。こんなクソみたいな国でそんなことやって何かなるんすかね。」という台詞が響いた。これは2014年の東京のリアルだよ。ゴジラをハリウッドから呼び戻したのは、やっぱ東京を破壊したいという大勢の集団無意識だったんだな、と。クソみたいな現実への破壊願望を昇華させる力を映画が持っていることをまだ人々が信じていることを信じ続けたい。

それと、感情をコントロールすることが日常となったオカマの生き地獄という視点にはハッとさせられた。この地獄には共感する。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)jollyjoker[*] ぽんしゅう[*]

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