コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 恋人たち(2015/日)

映画は文句なしに面白い。だが、ドキュメントタッチで映画的演出をおこなった結果、リアルさより気持ち悪さや不気味さが浮き出ていないか。
pinkmoon

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







秀逸な映画だ。だが異様な映画でもある。

この映画は無名俳優を起用し、ドキュメント的な描き方をしている。恐らく日常のリアルさの追求だ。だからその分、いくつか行動を起こすシーンでは余計に異様さが際立っている。主婦が肉屋の男と自転車に乗りニワトリを追いかけたり、本当に荷物をまとめて押しかけたりする。また妻を殺された男が覚醒剤を求めたりする。日常のリアルな流れから突飛な映画的エピソードになりすぎてしまい「おいおい、そこまではやらないよ」と突っ込みたくなる。映画なのかドキュメンタリーなのか。

人間、大小違いはあれどもみんなギリギリのところで生きている。また、みんな多少の異様さも兼ね備えているが、多くはそれを見せないで生きている。だから現実を忘れることができる映画的演出が面白いのだ。 この映画の描き方が、結果として「映画」は「事実」より奇なりとなっている。映画として良くできている分、際立ってしまうのだ。

誤解しないで欲しい。素晴らしい映画であることは間違えない。 主婦は不器用な夫への想いを。エリート弁護士は失った友人への想いを。男の妻への最後の語りは観るものの胸をえぐって感動する。3人が想いの丈を叫んだ後に広がる橋梁と青空はとても映画的で好きだ。整頓された部屋と妻の位牌に飾られた鮮やかなチューリップも希望へと繋がるメッセージだ。 ドブ川でも河はまっすぐに凛と流れている。人生も一緒だというメッセージを感じ取った。 橋口亮輔監督の苦悩と想いも私なりに感じ取った。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)ロープブレーク[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。