[コメント] 幽霊と未亡人(1947/米)
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室内、屋外の造形や画面の魅力もさることながら、レックス・ハリスンの無骨ながらも包容力と節度を弁えたキャラ造形が何といっても魅力。物語終盤の手前で、何とも心を打つセリフを残して姿を消す、その去り際の印象深さ。その後の展開で視界から姿を消しても、余韻としていつまでもそこに存在を残している。
あらためて思ったのは、ファンタジーを持ち込むことにあたっては技術云々よりも、まずはコチラに「そこにあるべき、いて欲しい」と思わせなければ始まらない、ということ。ここでも「あの魅力的な船長にまた会いたい、でも姿を現すならここ以外にはあり得ない」、というところでそっと再び姿を現してくれる。
船長以外のキャラ造形も素晴らしく、ジーン・ティアニーも、ただ美しいだけではなく、むしろ等身大ゆえの魅力だ。物語には、彼女の欠点に見合った試練がちゃんと用意してあるし、終盤の駆け足の展開においてさえ、以前よりも寛容さが生まれ、さらに年を経ると世界を閉ざした老人特有の気難しさが見えはじめ・・・と、短いシーンでその変遷を端的に表している。ラストで去り際の姿が若かりし頃のままだったのは、きっとその時で彼女の時間が止まってしまったため、と個人的には思う。それがまた切ない。
あらためて現代の姿でリメイクしたものも観てみたい気もするが、この映画の最大の美点である「節度」、これが再現できない位ならなくもがな、という気もする。この映画の「節度」ゆえの忘れがたい余韻は、凡百のCGが束になったって再現できる類のものでもないのだから。
(2006/1/9)
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