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[コメント] さざなみ(2015/英)

物語技法としてはひとつ優れものだが、登場人物を物語の実験に使っている印象も残った。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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トム・コートニー、結婚45周年のラストだが、元彼女とはそれより長い時間を過ごしてきたのだ。しかも妊娠していた。元彼女が氷詰めになって発見されたとはすごい体験。これを写さない選択は映画を等身大にしている。これを見に行くことができないというのもキツい体験だろう。彼の側からすればシャーロット・ランプリングが恨めしいだろう。

終盤のパーティはいろいろ面白い。夫婦写真展示の件は、氷詰めの彼女も登場しやしないかと疑われるし、コートニーのスピーチも何を喋り出すか判らないヒヤヒヤ感がある。彼は前日に旅立っていたかも知れなかった。それらを押し殺してシャーロット・ランプリングとの共生を選んだのだ。しかし妻は正反対の決断でもって夫を諦めた。映画として物語としては、衝撃のあるいいラストだったが、登場人物を物語の実験に使っている人工的な印象も残った。

この、夫に振り上げられた手を外してしまう収束は一義的なものだ。エンディングで流れるムーディー・ブルースのGo Nowの歌詞が妻の思いの丈であり、他の解釈は意味をなさない。この対訳を字幕で写さないのは日本の輸入業者の恣意に思われる。ランプリングはこの結婚記念パーティの選曲を電話で伝えている場面があるから、これは彼女の思いと受け取るべきだ。「Go Now」はこんな歌詞。I don’t wanna see you go, but darlin’, you’d better go now.(君が出て行くところなんて見たくないんだ/でも、ダーリン/出て行くなら、今すぐ出て行って)

(評価:★4)

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