[コメント] エクス・マキナ(2015/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
2014年の冬にオンラインマガジンのwiredの記事でこの映画を知って、以来日本での公開を待ちわびて、ようやく先日劇場鑑賞してきました。
その間、欧米での公開日が過ぎても、日本公開の話がなかなか聞こえてこなくて、Blu-ray国際版なんかも先に発売されちゃって。ああもう日本公開はないのかなーなんてあきらめていた矢先の日本公開でした。貧乏な私は輸入もんのBlu-rayに投資する思い切りがなくて、kindleで数百円だった台本(公式スクリプト)買って何回も脳内再生してました。
映画はほとんど脳内再生と同じで、その部分はとっても満足だったのですが、台本や予告編からは想像できなかったところが、なんとも興ざめだったんですよねー。
それはAIと原爆との比喩。台本以上に執拗だったところがちょっとね。
ヱヴァちゃん作ったのは検索エンジン最大手の会社ってことで、いくらブルーブックだって言われてもGoogle様を思わずにいられない。携帯電話の情報までハッキングしてまっせってところも、欧州のIT屋っぽくない。
で、ブルーブック社の社長の慰みもののフェムボットがキョウコ。なぜにダッチワイフに日本名付ける?
まあ、社長のネイサンとケイレブが一緒に箸でなんか食ってるシーンが出てくるから社長は日本趣味がありそうという布石は打たれているんだけど、"原爆の父"オッペンハイマーのセリフを二人で確認する時点で、映画の作り手が人類を破滅させることのできるテクノロジーとしてAIと原爆とを同一視しているのが明確で、原爆=アメリカだから蹂躙されるのは日本人じゃなきゃいけないのねってそのステレオタイプに驚く。
最後、ネイサンが刺されるシーンでは彼はなぜか白装束で、刺されて血が滲んで日の丸みたいになるんだよねー。台本では刺されるとしか書いてなかったから、あー日の丸だーとうんざりして見てました。
極めつけは、エンドロールで気がついたけど、挿入歌がエノラゲイという曲だったこと。エノラゲイといえばヒロシマに原爆を投下した爆撃機の名前です。これで一気に許容範囲を超えた。しつこい!
なんだろうこの執拗さは。
アメリカ発の行きすぎたテクノロジーを日本に滅ぼして欲しいって願望が作り手の心のどこかにあるのだとしたらそれはなんかずるい。それともイギリス人はアメリカにも日本にも飽きちゃったんでしょうかね。もう欧米捨てて(EU離脱とか、AIIBへのいち早い加盟とか)、脱亜入欧した日本も一緒に捨てて、俺たちイギリスはこれから大英帝国を再興して世界を新しく塗り替えていくぞーってことなんでしょうかね。
そういえばブルーブックはヴィトゲンシュタインの青色本から取られた名前だとか。これだけ底が浅い設定だと、かえってその知的趣味がバカに見える。俺は反知性主義でいいやって気になる。
そんなのに凝るくらいなら、ヱヴァが人工肌付けてその分盛れてるはずなのにちっぱいになることの考証なんとかしろ。ファンタスティック・フォーのジェシカ・アルバみたくCGでいいから細部に凝れ。巨乳にしろ‼
そもそも掘り下げるべきは、機械に性を持たせる人間の業についてなんじゃないか。アンドロイドとのSEXと屍姦趣味との差の哲学的考察くらいやってみやがれってんだ。
[新宿シネマカリテにて劇場鑑賞]
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