[コメント] 君の名は。(2016/日)
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これだけ大ヒット上映中の作品を新海誠が作り出すなんて正直驚きで、失礼とはわかっていながらこの監督はいい意味で「厨二病こじらせた」監督というイメージしかない中で、それが大衆受けしたというのはそっち方面に合わせて正解だったということだろう。 巷では誰に聞いても良かったと騒がれ、「ジブリを継ぐのは新海誠だ」とかいう声まで上がり、まあそれだけのヒット作になったという点では特に反論はない。反論はないが、これで日本のアニメを背負って立つ存在だとか最高すぎて拍手喝采とか言われるならば多くの好評の中で心苦しいが待ったをかけたい。
はっきり言って新海誠の作品は綺麗すぎる。映像はもちろん綺麗であり、本作でも何度となく太陽光や町の俯瞰したアングルからの明かり等、幻想的で美しさがあり、それがこの監督の持ち味とも言えるだろう。ただそれだけでなく、ストーリー自体が綺麗。突然入れ替わった二人の男女が恋に落ち、互いを求め合って絶望的な現実に立ち向かいながらハッピーエンド。いや、綺麗すぎる。綺麗事すぎる。間違いなく今作が売れたのは何よりもこのストーリーにこそ魅力があるのだが、結局この監督の拾った部分っていうのは全部綺麗事。 映像もそう。しつこいまでに光を取り入れ、日中には日光が差し込み夜には星が瞬く。正直くどい。 ストーリーもそう。そもそも展開としてむちゃくちゃで、何も説明されてないのに目の前の設定を受け入れるしかない。何で入れ替わったの?何で時差があり、何で気付かないの?突然入れ替わらなくなったのは何故?叩けばいろいろ挙げられる。そういうのを全部強引に推し進めるだけの展開力がなかったとは言わないが、綺麗にうまく大衆が喜ぶ所だけを寄せ集めました、って感じが苦しい。 新海誠って監督は正直汚い部分を描けないんじゃないだろうか。将来的にどうなるかはわからないけど、現段階ではそうじゃないだろうか。語るほどの作品は見てないが、『秒速』なんかも「鬱アニメ」とは言われているが、ただのこじらせただけで人間の汚い本質だったり直接的に汚い部分を描くことを避けてるようにしか思えない。描けないのか描かないのかは知らないし、アニメーションはもっと幻想的でいいじゃないかって発想があるのかもしれないが、そこを避けてるようではこれ以上の成長は望めないだろう。
さらに成長が望めないと思ったってガッカリしたのはクライマックスの『秒速』の使い回し感。またその展開?作画も似てるし、イマイチ変化を感じない。同じような展開ではいつか限界が来る。 また、山崎まさよしでなくラッドに代わっただけの曲頼り。まあラッド自体好きではないのだが、そういう曲じゃなくても良かったでしょう。音楽に声は正直言って邪魔にもなり得るよ。 あと個人的には山頂の瀧くんと三葉のクサいやり取り。後の展開から欠くことのできない部分なのはわかるけど、あのやり取りがクサいと一気に興ざめる。どうしても二人のリアルなやり取りはむず痒く、むしろ最後の最後に初めて会うくらいの感じならもっと良かったんじゃないか、と惜しいようにも思う。
まあそれでも内容としては幻想的な絵空事かもしれないがツメの甘かった部分を補うだけの勢いがあり、面白かったのは事実。酷評を思い切りかましましたが、これだけ好評だらけではきっと新海さんも鼻高さんになっちゃいそうで、成長はもちろん期待もしてますし、別に大衆向けじゃなくても元々ファンだった層を大切にするのも必要だと思いますし、だから自分なんかが僭越ながら酷評させていただきました。面白かったですよ、新海さん。
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