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[コメント] 映画 聲の形(2016/日)

現実問題として苛めっ子と苛められっ子は往々にして成り代わる。そしてやり取りされる言葉や行動は相手にとっては死を選ぶほどに苛烈なものとして響く。だが、ここで「死んだら負け」などとは言えないだろう。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







仲間として受け入れるために、余計なプライドを捨てさせてみんなと同じにさせるための「苛め」を子供らは「いじり」と呼ぶ。お笑い芸人の通過儀礼のようなものだ。そこに悪意などはない…そう主張したところで、それを受けた者のなかには精神が折れて死を選ぶ者もいるのだ。「いじり」は受ける者によって簡単に「苛め」にすり替わる。

そんな事実を主人公が全身で知ることになり、打ちひしがれるこの物語のなかのウソは、ヒロインの博愛ぶりだろう。彼女は苛めに抵抗しないどころか、それを進める主人公を好意で包む。あり得ないことだが、この物語にとって必要な設定である。これはエンタメであるからだ。だから彼らの周囲に苛めを行なってはばからない少女や、友情を裏切ることばに動じない不変の友人らが配置される。そしてヒロインは、彼らとも手をつなごうとして積極的に立ち回る。

そんなウソの積み重ねによって成るものが感動的なラストであり、不覚にも自分の皮膚に鳥肌の立つ感覚を覚えたことから、俺はこの物語を否定しきれない。だが、それはきっと憧れなんだろう。俺には人をうまく苛める才能はないので、苛められっ子としての経験しかないが、すっかりその後人を信じる力を失ってしまった。よって俺はキャラクターの強さに嫉妬する…間もなしにこの映画を見終わる。戦いの日々を脱出できた彼らに、祝福として4点献上。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ペンクロフ[*] おーい粗茶[*] けにろん[*]

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