[コメント] 女の歴史(1963/日)
走る救急車のカットから始まる。続いて世田谷の美容院に場面が移り、救急車のサイレンの音と事故に関する会話となる。不吉なオープニング。美容院の主人が、高峰秀子だ。彼女の家族には、息子の山崎努と、姑の賀原夏子がいる。
本作は現代のシーンと高峰及び賀原のいくつかの回想シーンで構成されるが、山崎の出生の日のフラッシュバックから続く、戦中戦後の長い回想場面が全体のコアとなる。また、空襲シーンの焼夷弾の爆発も迫力があるし、疎開先、栃木県の広々とした山間での農作業と、戦後すぐの薄暗い東京との対比も実に効いている。この東京の屋外セットは素晴らしい。高峰が、戦死した夫・宝田明の友人・仲代達矢と二人歩くカット。建物の陰での抱擁とキスの場面。
現代のシーンでは、山崎の恋人役の星由里子と高峰との確執がテーマになるが、ラスト近く、団地の側の坂道で、雨の中、高峰が星と相対する画面が忘れがたい。
脇役では、闇屋の顔役で高峰に美容の道を勧めることになる淡路恵子と、淡路に調達を頼んだペニシリンを持って来る草笛光子が、相変わらず落ち着き払った強い演技で印象に残る。ただし、全編通じて、ほとんどコメディリリーフと云っていい賀原夏子が美味しいところをかっさらっていく。ラストを締めるのも賀原である。しかも、全くあっけらかんと。そして、ラストカットは、高峰と賀原が二人で歩いていく後ろ姿なのだ。
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