[コメント] 溺れるナイフ(2016/日)
タイトルの表す通り、水のイメージが氾濫する。海と川。特に鳥居のある岩場の場面の、濃い海の色と白装束で泳ぐ少年−菅田将暉。こゝはかなり強烈なイメージだ。ヒロイン−小松菜奈は、海や川で水浸しにされる役柄なのは当然だが、部屋でも屋外でも横臥の(寝っ転がった)場面が多く、端正な構図で捉えられる。
カッティングもかなり特徴的で、こゝまでの短いカット割りは目を引く。山戸結希は自分のリズムを持っているのだろう。一方、キャラクターの造型という部分では、物足りない点が多い。私としては同級生役の上白石萌音の扱いの中途半端さが一番気になる。また、後半よく目立つ重岡大毅は、満開の赤い椿のシーンという、とびっきりの良いシーンもあるのだが、小松の部屋を訪ねる場面でも、バッティング・センターやカラオケのシーンでも、即興っぽいディレクションが緊張感を途切れさせてしまう。部屋で小松と軽くキスする演出は、やっぱりあかんやろ。或いは、高名な写真家で映画監督の広能さん役−志磨遼平は気持ち悪いし、小松を襲う嶺豪一は、逆に気持ち悪さが足りないというか、怖さの演出が足りないと思う。エピローグの、授賞式での小松の科白も、つまんない科白で、こゝもなんとかならなかったのかと思ってしまう。という訳で、厳格さを欠いたディレクションも目立つのだが、全般に画面造型には侮れないものがある。今後に期待したい。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。