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[コメント] パトリオット・デイ(2016/米)

何が起きるか分かっている事件を描いてこの緊迫感。オーソドックスなホラー映画と同様の演出手法だろうが、上手い。上手すぎる。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ありふれた日常を退屈させずに描く冒頭からして、そもそも上手い。何かが起こりそう、何かが秘かに進行しているという不穏な気配を差し挟むのがまた巧みだ。そして、待ってましたとばかりにパニックが発生する。これがまた計算し尽くされた混乱の極み(←矛盾表現)で、ほとんど神経が押し潰されそうになる。

 この後、畳み込むようにマンハント章に突入する。この辺りのドラマ処理も手際良かった(テロ指定に腰の引けていたFBI指揮官ケビン・ベーコンが、現場の散乱物の中に釘を見つけ、「テロだ。われわれが取り仕切る」なんて)。

 捜査手法に驚かされた。至る所から監視カメラ映像を集め、人海戦術で1コマ1コマ繰返しチェックしていく。普通は泥縄式と言えば、泥棒に入られてから捕らえるための縄をなうという、対策が後手後手に回ることの批判的な例えだ。だが、いずれ初動は後手となることを前提とした、言わば泥縄式の完全徹底。犯人包囲に適切な縄を、いかに素早くなうかに注力する。地を這うような捜査の積み重ねに、いちいちグッとくるものがあった。

 住宅街での銃撃戦にもサスペンスがあった。当時の報道で、警官らと犯人の間に銃撃戦があったことまでは覚えている。でも警官に被害が出たのか、何人か亡くなったのかまでは記憶してない。この警官が死ぬのかしら、あの警官かしらと、終始、はらはらさせられた。

 社会的なことを言えば、テロリズムの非人道性に向き合いながらも、この社会に確実に存在する輩として犯人たちを描いていた。つまり、犯罪の構図を浮彫りにしていたと思う。

 まあ、≪善と悪は人の心の中にあり、悪という悪魔に打ち克つことができるのは、愛の力だけである≫てな唐突で露骨なメッセージは、僕の好みで言ってもチト安っぽい。ただ、ボストン市民の団結を描くという構成にした以上、なんらかのメッセージを込める必要はあったかと思う。その意味では当たり障りなきメッセージだったかな。少なくとも、映画鑑賞の妨げになるほど鼻につくものではなかった。

85/100(17/12/18見)

(評価:★4)

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