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[コメント] やくざの墓場 くちなしの花(1976/日)

実話の醍醐味が肝である「実録路線」において、敢えてフィクションで話を紡ごうとするのであれば、これくらい針が振り切れている方が方法論としては正しい気がします。生半可なフィクションじゃ事実にはそうそう勝てない。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 結局「事実は小説よりも奇なり」ってことなんだと思います。ここに至るまでにも「実録路線」という名の「実話信仰」のもと、「実話っぽくしようとした結果、小さくまとまってしまったフィクション」が何本も作られてきています。結局このジャンルで小説が事実を超えようとするのなら、「小説よりも事実よりも奇であること」が効果的だったってことなんでしょう。これでもかと言わんばかりに振り切れたフィクションが持つ高いテンションは、逆に実話のような迫力と物語性を醸し出してくれています。

 そしてこれには、画面に大きく映し出される「深作欣二」の空気が大きく作用しているように思います。『仁義なき戦い』でも十二分に効果を発揮した「ドキュメンタリー風映画」のトーンがここでも存分に用いられており、だからこそ実話と同じ土俵で勝負できるフィクションが出来上がったんでしょう。

 そう考えると、渡哲也っていうのは菅原文太と同じくらい「深作欣二の実録物」と相性がいいのかも知れません。松方弘樹などと違って遊んだ演技をしないガチンコ直球の2人だからこそ、深作のハードなドキュメンタリー風映画に違和感なく 入り込めるんですよね。

 特筆物なのはオープニング。ヤクザに金を脅し取られたボンクラ渡哲也が、突然ねじり鉢巻とサングラスでヤクザを追いかけ出すところで観客をまず「よっしゃぁ!」と高揚させ、更にその渡が実は刑事だったというところで一気にヤクザごと観客を騙す。あっと思っているところで畳み掛けるようにタイトルがドーン。これには一気に持っていかれました。

 ただし、ラストだけはちょっと安易に過ぎるように思います。あそこまできて、最後の最後で一気に予定調和の中に取り込まれてしまったような感じがしました。

 ちなみにこの梅宮辰夫は太りすぎで、ほっぺたツヤツヤすぎだと思います。

(評価:★3)

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