[コメント] エルネスト(2017/日=キューバ)
冒頭、ゲバラ訪日時の有名な挿話に時間を割きすぎたことが、得意げなトリビアあるいは右派すり寄りポーズめいて興を削がれた。それでもオダギリ中心の本筋に入ってからは英雄ではなく、信条に殉ずるボリビア青年として描く慎ましさは好ましいものとなる。情緒先行の演出や劇伴音楽はまだまだ過度だ。ストイシズムに徹すれば一個の青年の活写として佳作となっただろう。(以下は反論へのお答え)
ゲバラ訪日時のエピソードにほんとうに「阿り」はないでしょうか。広島で死んだ数十万の命に批判されるべき筋合いなどないのは当然ですが、彼らが殉じたのは「人」のためというよりは国家や民族、あるいはもっとミニマムな家族や愛する個人のためでしょう。それはエルネスト青年と同じではないか、と言われればその通りなのだけれど、ではそういった人々のなかでなぜ日本人だけにゲバラが振り返った事実だけをクローズアップされるのか、と問われればどう監督は答えるのか。それが問題です。ゲバラが敵とする合衆国の人々のなかにも人のために戦い死んだ者たちは沢山いる。それが理解できるほどにゲバラはコスモポリタンではあり、それゆえに「人のために死んだ」日本人たちのみを振り返ったのではないだろう、とは思われます。ゲバラの意志はもっと別にある。その事実を曲げたところに阪本順治の母国人への「阿り」はあるように思われます。
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