[コメント] ブルーム・オブ・イエスタディ(2016/独=オーストリア)
ナチの暴虐を糾弾するその張本人が、おのれの性情に左右されるばかりのダメ人間であるところが新機軸といえるだろう。「罪なき者がまず石を投げよ」という教えは凡百の民衆には害毒であり、結果糾弾すべき巨悪はスルリと逃げ延びることとなる。馬鹿が言いたいことを言えるのが民主国家だ。そんな発想が浮かぶ意味では評価すべき作品。
ただしヒロインもヒーローも相手の色香に迷うのみならず、到底褒められたものではない馬鹿であり続けることは決して褒められたことではない。特にヒロインが安易に自殺を試みようとし続けたり、気まぐれに男をその信念や行動で見限ったりくっついたりのいい加減さを見せるわけで、これは2時間を通じて物語を牽引する人物とは認められかねるのが正直なところだ。
でも、敢えてそこが許せるならばすべての歴史の「悪」を取り上げる作品の昇華もなされるだろうとの気はしてくる。慰安婦問題も大虐殺の事件も、すべて「悪を懲らしめる正義の勇士」が裁くことになっているから反発を生むのだから、不謹慎を覚悟で言えばこの映画のように寝物語で語られる「柔らかさ」が用意されたなら、結構いい結論が導き出されるのかもしれない。そんなふうにやつがれは思うのです。
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