[コメント] 焼肉ドラゴン(2018/日)
ブレヒト『肝っ玉おっ母とその息子たち』が想起させられる。ジャパニーズ・ドリームという幻影を見ていることを強いられた在日韓人たちが負わされた負債は、この映画のなかでも目に見えて示されたものである。結局このホームドラマが表わすものは韓国人ではなく、彼らを搾取し続ける怒りに答えない「日本」であることに気づく。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画を観たいと思ったのは、美人三姉妹の笑顔に情けなくも陶然としてしまったためなのだが、淡々としながら見るものに訴えかける家族の本音は、この国に住むことを余儀なくされた家族の構成員たちに降りかかる無慈悲な圧力への怒りであった。長女の脚、父親の腕などはもちろんのこと、姉妹の悪運に翻弄されながらの人生の選択、そして長男の悲劇にも著しい。最終的に父親たちがストレートに降りかかった災いについて糾弾することは、日本人の見る映画にしては無粋と見るものもいるだろうが、それは奢れる日本人の世迷言と切り捨てるべきなのだろう。力道山が、松田優作が味わった屈辱を知りながら闇へと葬った在日の思いは、やはり日本人の呑気な思いを超えている。
ただし、作劇についての技術論も考えてはみたい。ベタな感情描写や泣かせ劇としての演出は、ときに邦人鑑賞の際に観方を誤らせることになりそうなことは痛い。演劇と映画の演出論の相違は浅学のやつがれには語れる仕事ではないが、鈍感な極右はこのあたりを見誤りそうだ。これを『三丁目の夕日』の語り直しととるような門外漢を啓蒙する必要にかられての作劇なのだろうが、泣きのホームドラマとして徹底したあたりは惜しまれた。親子で鑑賞する客もあれば、これを「可哀想だね」で済ませない親の意見は必要だろう。在日街はまだ形をかえて日本のあちこちにあるのだから。
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