[コメント] 素晴らしき休日(1938/米)
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社長令嬢の恋人との結婚式と自分の将来の夢との間で奔走する青年の恋愛ドラマ。
ケイリー・グラントが自分の将来の夢を持ちながらも愛する恋人ジュリアとの結婚と自分の家業を継がせようとする彼女の父親との板ばさみになって、葛藤する主人公ジョニーを感情表現豊かに好演。さらに表情演技でも、前半でジュリアを愛しているのが伝わるような優しい笑顔と自分の将来の夢を彼女に受け入れられなかった後で見せる作った笑顔を巧みに演じわけ、役者の演技だけで感動させられた。『フィラデルフィア物語』でもジョージ・キューカー監督と組んだケイリー・グラントだが、こちらの方が彼の魅力を巧く引き出しているように思う。
ジュリアの姉、リンダ役のキャサリン・ヘプバーンも仕事一筋で家族に対して冷淡な父親と衝突しながらも、妹のジュリアの幸せを願って、常にパーティを計画しようとしたり、ジョニーと恋仲になりそうになると自ら身を引くなど妹想いな優しさを秘めた面を巧く表現しており、初期作では性格のきついお嬢様的な役柄の多い彼女の違った一面を見させてもらった。
ストーリー的にはジョニーはジュリアに自分の将来の夢を理解されなくても常に自分の将来の夢は諦めず、彼女との結婚や彼女の父親の圧力との間で奔走しながらも、いつかは叶えるために最優先で行動するところが彼のポリシーが最後まで貫かれていて気持ちよかった。また、自分の夢を優先させながらもジュリアは悲しませぬように、家業を継がせようとする彼女の父親の願いを受け継いだりするなど、常に彼女のことも考えて行動しているところも好感が持てる。リンダのジュリアに対する行動も、彼女の結婚を喜んでパーティを計画したり、ジョニーに惹かれながらも身を引き彼を彼女に託そうとするところなど、本当にジュリアのことを家族として愛しているんだなというのが伝わる描写で暖かみがあり感動的。
ただ、納得がいかないのは彼らに対するジュリアの対応。特にジョニーに対しては努力する生活をするのは嫌の一点張りで、彼の理想を少しも理解せずに父親の家業を継がせようと一方的に結婚を進め、後半では彼が家業を継ぐのに乗り気でないと知ると、一気に彼への愛情が冷めるところなど実に身勝手な女性だなと感じた。さらにリンダに対しては、彼女の態度に合わせて仲のいいふりをしていただけと告白するところなど、彼女の彼らに対する態度は冷酷で非常に自己中心的で、最初の頃にあった魅力が後半になるつれどんどん失われていき、それまでの映画の雰囲気を壊しているとしか思えなかった。
また、この作品で気になるのがリンダや彼女の弟のネッドは家族に見向きもしない父親に対して愛情を抱いていないのに、ジュリアだけはなぜ父親に好意的なのかという点。少なくとも彼女らの父親のエドワードはリンダやジュリアが生まれた時はあまり喜んでいたわけでなかったのなら、普通は自分が誕生したことを好意的に思っていない父親をジュリアも憎むと思うのだが。それに、自分の誕生を好意的に思っていなかったのにジュリアが父親に媚びるのはどう考えても彼女は父親に好かれたくて、他の二人は反してまで父親に好意を抱いていたという風に観た方が自然だと思う。それにも関わらずこの作品は、ジョニーとリンダを結びつけるためにジュリアを単なる努力するのが嫌いな、ただの怠け者の金持ち令嬢というキャラで片付けてしまっている。
この辺は序盤のジョニーの親代わりのポッター夫妻の言葉を伏線にしたのだろうが、ちょっと納得がいかない。せめてジュリアがなぜ他の二人に反してまで父親に媚びるのか理由を描いて欲しかった。後、ラストはリンダとジュリアとの間のわだかまりは解いてからでないとハッピーエンドになっても後味はよくないように思う。
映画としてはジョニーとリンダの彼女に対する行動と彼らの演技だけで最高評価をつけたといってもいい。
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