この映画は、ゆっくりゆっくりと進んでいく。誰も金切り声を上げないし怒号も響かない。そうだよな、突然どん底に突き落とされて悲しんでる人ってこんな風に無気力状態で日々をやり過ごしていくのだろう。事故一年後の追悼式でローマンに話しかけた老紳士のように、いつ抜け出せるか見当もつかない地獄の日々を、自分の命が尽き果てる日まで静かに生きる。老紳士のシーンに代表されるように「静けさ」の中に深い哀しみを描いた良作だと思う。

シュワルツェネッガーは着替えシーンなどで時折、太ってダルダルになった体をスクリーンに晒す。彼なら年を取ろうとも映画の撮影に向けて体を絞って鍛えることなどわけないはずだが、今作は一般的な老人の役作りとして醜く肥厚した体を敢えて晒した。実に潔いではないか。これを「あのシュワちゃんも落ちぶれてダルダルになったか」と見られるのは不本意だろうな。