[コメント] 空母いぶき(2019/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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前半部分は、原作を置き去りにし過ぎていて、怒りすら感じた。これがテレビ放送だったなら、チャンネルを変えていたかもしれない。そういう意味では、映画館で観ていて良かった。少なくとも観なければよかったと後悔する作品ではなかったから。
「戦争」にしてはならないが「戦闘」で負けるわけにはいかないことを、描きたかったのだろうとは思う。また、今の自衛隊の現状を良くも悪くも描き出し、その是非やあるべき姿を世に問う思いが製作者にあったのかも知れない。何にせよ、原作者がOKを出したのは確かなことだから、それなりに原作者の意図も反映できていたのだろう。
実在する国名を挙げて、戦闘を描くには、実際の外交問題が起きかねないとい配慮だったのだろうと推測はできる。しかし、前半では外交問題をすっ飛ばして、いざ武力衝突となった時に「防衛」とは何か、自衛隊の役目は何かを問い、戦闘の真っ最中にありえないような外交での決着を持ち出すのは、無理があるだろう。大げさに例えるなら、ゴジラが街を破壊している中、いざ自衛隊の反撃という時に「絶滅危惧種を攻撃していいのか」と隊員同士に議論させ、次にいきなりゴジラの飼い主が出てきてゴジラが引き上げるみたいな感じと揶揄したくなるほどの陳腐さを感じる。
「映画化が不可能な原作」と言われていたのは、戦闘シーンばかりでなく現実の外交問題にも関わるという点があったはず。この作品が、果たして「原作を映画化できたのか」という評価をしていいのかどうかは疑問である。その曖昧さはそのまま、「戦争」、「戦闘」、「軍事」「防衛」の曖昧さになってしまったような気がする。そこは致命傷だったかもしれない。
そんなこんなで結論的には、「なんとかして、(仕方なくでも肯定的に)自衛隊に人を殺させたかった」映画に思えてしまうのだ。おそらくは原作に敬意を表して製作したのだろうが、そこに原作を踏みにじった感が残る。何とも消化不良なので候。
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