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[コメント] Diner ダイナー(2019/日)

40年周期の物語。意欲は買う。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 閉鎖空間の中で殺し屋がひしめき合い、そこでの人間模様を見るという、なかなか舞台演出的にぐっとくる設定の作品の映画化。

 この作品を映画化する際、蜷川監督は面白い手法を採った。

 まず本作は登場するのが全部日本人であるにもかかわらず、設定自体は禁酒法時代のアメリカの地下酒場という設定になってる。これを演出するのに、さらっと流すようなことはしない。登場人物全員がオーバーアクションで、自分の存在感をこれでもか!とアピールしている。手法はほとんど舞台演出だが、不自然な設定の作品を余計不自然な演出でアレンジすることで不思議な作品にさせようとしているのは分かる。

 実際この作品の演出は日本人監督では蜷川監督にしかできない。極彩色の舞台の中、アクロバティックな動きと酔いそうになるほどに動くカメラワーク。これは1970年代に一世を風靡したサイケデリック演出だ。

 今やサイケデリックなんて言っても大半の人は覚えてないか知らないだろう。それを逆手にとって行ったことで、全く新しい雰囲気を作り出すことには成功してる。前作ヘルタースケルターではうまく成功させた演出だったが、それを狭い空間で全開でぶっ放した感じがある。

 1930年代の舞台を1970年代の演出で、2010年代に行う。監督が意識したかどうかは不明だけど、40年周期の作り方という面白い演出になってた。

 そんな特異な演出故に特徴のある作品なのだが、演出以外の部分がペラッペラなのがなんともかんとも。

 小説だから荒唐無稽は受け入れられるものも、映像化すると陳腐化するものも多い。本作はまさしくそれで、観てると色々痛々しさばかりが目立ってしまって見続けるのが辛い。

 その中で気を吐いている藤原竜也は相変わらずのキレッぷりだが、この作品ではそれも浮きまくってしまった。主演の玉城ティナが演出に追いついておらずに個性を見せられなかったのも痛い。

(評価:★2)

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