[コメント] 真実(2019/日=仏)
実にゆったりと寸分の違いのない大作家風の演出ぶりである。是枝の研ぎ澄まされた気持ちが映像の隅々にまで入り込んでいて、彼も随分老成してきたなあと思わせるほどだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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それほど映画的にはけなすところなど全くない作品なのであるが、如何せんよくある母娘の大げさな諍いなどの葛藤もほとんどないことから、ドラマ的にはむしろ地味で(是枝はこれを狙ったのだろうが)ある意味劇的でないことから平板だと思ってしまい眠りを催す人もいるのではないかと訝ってしまう。
けれど、映画をずっと見てきた吾輩からすると実に面白く、感心させられることの多かった拾い物の映画であった。
映画の中の映画の製作シーンが絶品の出来で、ストーリーもこの本篇の映画よりむしろ断然面白いのである。マノン役の女優がとても麗しく、久々に僕ははっとなる。そしてラスト近くにはこのマノンとフェビアンヌとの確執を超えた空気感は人生への希望さえ見せるのだ。なかなかうまい展開で、是枝の熟成まで感じるほどだ。
まあベルイマンの「秋のソナタ」+トリュフォーの「アメリカの夜」を足して2で割ったような映画といえば少々乱暴だろうか、けれど是枝は絶対にこの2作を意識しているはずだと僕は思う。
おそらく一般受けはしない映画だろうが、長年映画を見てきた人々からは映画への熱い愛を感じる秀作である。もちろんそれを感じた俳優陣の熱い思いも映像から十分感じ取れた。
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