[コメント] 空の青さを知る人よ(2019/日)
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超平和バスターズのファンではないが、今回ばかりは連作を逃さず観て愛想を尽かさなくてよかった。正直、前2作のように青春を描いてオヤジが付いて行きかねる青臭さはなかった…というのは違うな。若山詩音や「しんの」の青臭さたっぷりだが、それが充分に扱きとれる春を過ぎた作者たちの共感への架け橋は強固であり、なおかつ空飛ぶ少年期にもうついてゆけない中年男女の、その年齢ならではの逆境へのあらがい方が、それもまた共感を呼ぶものだからだ。
若山の現状との戦い方は限りなく愛おしいし、若き吉沢亮の有言実行ぶりも爽快きわまりない。だが、中年以上の観客にそれをなぞって良しとする恥ずかし気のなさが横溢するような作品ではないのだ。中年になった姉・吉岡里帆や恋人はもどかしく偽悪的ですらあるが、語らずして子供たちに「彼らにも戦い方がある」ということを誇らせてやまない存在でもある。「嘘つきのオトナ」の名で青春映画でクサされ続けた我々だが、スタッフはそこに生き生きとした「朱夏」のありかたを示し、自己投影の余地を残したのだ。「一粒で二度おいしい」って奴だ(違うか)。
今更な話だが、「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」という言葉の後半は日本だけのデタラメだ。だが、俺は昔からこの後半が好きだった。大海を知るのが至上の目的か。空をはかる者もそれはそれでいい生き方じゃないか。言葉は自分を救ってくれるような気がした。この押しつけがましくないエール。俺には有難かった。そんなわけで、むしろ松平健にこそ年齢の近い俺もまた、「夏」や「秋」を愛する機会を与えられたかのように感じとれた作品だった。
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