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[コメント] 幸福路のチー(2017/台湾)

ビンロウ好きのおばあちゃんと、幼馴染のベティちゃんは好きだなー。
ペンクロフ

ちびまる子ちゃんみたいな絵柄で油断してしまったが、かなり高級な映画だ。様々な時制が入り乱れ、モザイクのようにチーの半生が描かれる。高畑勲の『おもひでぽろぽろ』のような構成。湯浅政明今敏のような奔放な幻想場面。台湾現代史の中の極めてパーソナルな物語が、誰にでも通じる普遍性をもって丁寧に描かれている。

たいへん見応えのある作品ながら、これを好きかというと好きじゃないのだ。全編を覆う現状肯定感。田舎に帰ろう的な精神性。まるでいつでもトンカツ食って、人間えらすぎもしない貧乏すぎもしないちょうどいいあたりなんだとでも言われているような気がした(オレは『美味しんぼ』のトンカツエピソードが大嫌いだ)。

しかし「好きじゃねえや」で済ませられる作品とも思わないのだ。チーの生き方を諸手を挙げて支持する訳でもないし、ぼくはあなたの全部が好きという訳じゃありません。でもあなたの物語は拝聴する価値があると思うし、あなたの生き方を尊重もしたい。高級な映画には、観客を大人にしてしまう力があると思った。上で似てると書いちゃったけど『おもひでぽろぽろ』なんてねえ、「やることないなら農家の嫁になれ」ですよ。ボケ老人の説教ですわ。インテリは言うことが雑だよな。『おもひでぽろぽろ』は「言ってることは判るがお前の態度が気に入らない」映画の最右翼だ。でも『幸福路のチー』は実に殊勝で、全然似てない。態度が違います。態度大事です。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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