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[コメント] AI崩壊(2020/日)

SFサスペンスとしての骨格は、特に悪くも無いが、そう目新しいものではないし、ミステリーとしては平凡とも言える。ただ、今の時点だからこそ感じられるリアリティが半端ない。人は自分には理解できないもの、よくわからないものに不安と恐怖を覚えるということを再認識した。
シーチキン

映画そのものとしてはややご都合的な展開もあるが、まあがんばっている方だと思うし、個人的には三浦友和のほぼ一人勝ちといえる好演が良かった。

ところで、ずい分前の『踊る大走査線』シリーズ2作目だったと思うが、警視庁が極秘に都内の防犯カメラの映像を一手に集めて地下室みたいなところで多数のモニターでチェックできる、みたいなシーンが登場していた。犯人の居場所を捜すためとされていたが、ただその時はその多数のモニターを監視していたのは人間で、人力による、目で見る監視であった。

製作陣はそれによって監視社会とか何とかを表現したかったのだろうが、映画を観てそういう、防犯カメラの映像が一箇所にすべてあつめられて監視されるというのは嫌な感じはしたが、その多数のモニターを人の目で識別していては、あまり効果は期待できないじゃないの?という安心みたいな感じがあった。

それが本作では、仕組みとしては同じようなものを今度はすべてAIによる顔認証、身長や歩行認証などでチェックし、瞬く間に膨大な映像から探し出す。

ハリウッドのスパイ映画などでは、少し前からお馴染みとはなっていたが、映画の中として観ていた。それが本作のようにAIが人の健康データをすべて把握、点検して健康向上、維持のための最適なアドバイスをしている、という設定で見せられると、ああいう監視というか捜査みたいなことは実際に可能なのだろうなと思ってしまう。

そしてその一方で、映画を観ている私は漠然とAIという言葉は知っているものの、それがどういう仕組みで動いていて、どういうことができるのかもよくわからないままに、気がつくとそこら中でAIを利用した云々かんぬんとか言われる状態になってきて、へぇーっと思うまもなくそれが膨れ上がっている状況で、こういう映画を見せられると、ちょっと怖いというか不安というか、AIってやだなあと感じてしまう。この意味で、まさに今がこの映画を観る最良のタイミングというか時代とも言えると思う。

そして、こういう人の心理、今の時点での不安とか恐怖とかがあるからこそ、この映画を興味深く観ることができた。これがもう少し、AIの普及と理解が進み、そういうものも無くなっていったような時代に本作を観ると、「昔はAIはこんなイメージをもたれていたんだ、古臭いなあ」なんて思うようになるかもしれない。

だが逆に、「もう何年も前にAIの危険性を予測した映画がつくられていたのか、その警告をもっと真剣に聞いていれば・・・」みたいな感想だって、将来、出てくるかもしれない。そう思わせるだけのものはある映画だと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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