[コメント] ハッピー・デス・デイ(2017/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
たいして気分が乗らないまま見ていた映画で、登場人物のふとした言動に心をわっしとつかまれ、引き込まれてしまうことがある。
まっさきに思い浮かぶのは『普通の人々』における、ジャド・ハーシュ扮する精神科医が放った例のセリフだ。
「退屈な映画だなあ。なんでこんな映画が賞を獲っちゃったんかなあ」などと、だらけた気分で映画を見ていた私に、あのセリフが、グサリと刺さった。
じわじわ、とか、ズルズル、ではない。いきなりだ。それはホンの一瞬で、あたかも某コメンテータの名言のごとく、映画に「撃ち殺される」のである。
映画ファンのみなさんなら、かような「撃ち殺される」経験、きっとおありだと思う。たまらなく楽しくて嬉しくて、しかしそう簡単には得られない、至上の映画的快楽。
クソみたいな映画にまみれ続けた私は、もう何年も、そういう経験をしていなかった。
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ホテルで昼寝しようとして、ビデオ・オン・デマンドで選んだのがこの『ハッピー・デス・デイ』である。
タイトルも監督も俳優も知らない、まるっきり未知の作品だ。リストから本作を選んだ理由は、殺人鬼が暴れるというあらすじに、かすかにそそられた程度。
どうせ寝てしまうのだし、何でもよかったのだ。
ビアッチが殺人鬼に追い回されて殺されそうになってワーワー騒いでいるという、まるで「ゆっくり昼寝して下さい」とでも言わんばかりの内容に、私は眠気をこらえていた。いや半分眠っていたかもしれない。
だがやがてあの場面がやって来た。私は撃ち殺された。
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せっかく殺人鬼といい勝負をしたツリー。しかしカーターは惨殺されてしまう。 カーターの死をリセットするために、ツリーはためらうことなく自決するのである。
当初、イケてないカーターを歯牙にもかけなかったツリーが、殺人鬼との決着を棚上げしてまでカーターを救おうとしたのだ。何と崇高な自己犠牲か。
胸糞悪いビアッチだったのに、この行動でわっしとつかまれてしまった。 眠気も忘れ、映画に呑まれてしまった。いつしかヒロインを応援している自分がいた。
久しく忘れていた映画の興奮を、私は取り戻したのだ。いやあ、映画って本当にいいもんですね。だから点数ちょっと甘い。
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