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[コメント] 赤い風船(1956/仏)

やはりこの色彩が感動的なのだ。瞳を射抜く、この鮮やかなテクニカラーの「赤」が。あるいは風船の「浮遊」、少年の「疾走」、蒸気機関車が吐く煙の「立体感」、安直な物云いになることを辞さずに云えば、まさに映画的である。
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安直ついでにさらに云うならば、ここにおける「風船」は二重に映画的である。まず、風あるいは風と云うにも満たぬ微妙な空気の流れを可視化する、ニュアンスに富んだ運動であるところの「浮遊」という風船的本質の点。くわえて、ここでの風船は風船に本質的なその「浮遊」にとどまらず、まるで感情を持った生物であるかのように自由に運動するという「裏切り」を見せる点。裏切りは「映画」のエッセンスである。

 余談になりますが、市川崑トッポ・ジージョのボタン戦争』は明らかにこの『赤い風船』をモティヴェイションにしているでしょう。もちろん『トッポ・ジージョ』はテクニカラーではなかったはずですが、あの印象的な暗黒の画面は風船の「赤」を際立たせ、『赤い風船』の赤い風船に近づくための戦略でもあったのではないでしょうか。

(評価:★4)

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