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[コメント] 上陸第一歩(1932/日)

マドロスパイプと横縞シャツの岡譲二による元祖日活無国籍活劇、というには上海へ売られる水谷八重子がリアルに過ぎるだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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初期録音の使用法が初期らしく自由なのが本作の大いなる美点。蒸気船の導入を無音で綴る辺りはオヅと共通のものがある蒲田調。さらに喧嘩を工事音だけで示すのは前衛的で、スタンバーグというよりも『伯林−大都会交響楽』(27)や『十月』(28)、『これがロシアだ』(29)等の工業描写の影響があるに違いない。灯台の灯をガラスの反射だけで示すエンプティショットも感じがいい。

紐育の波止場』の翻案だが冒頭の汽船の窯焚き描写以外は画的には影響は感じられず演劇調。水谷がいい。音声がときどき濁るのはトーキー初期のご愛敬。窓辺での入浴シーン(女性が体躯を洗っている)はこの時代とは思えぬ大胆さでびっくりさせられた。私的ベストショットは岡がふっと窓の下を見ると水谷が立っているという不思議なショット。ふたりの舞台のような悲恋のやり取りが見せる。タイトルは何なのだろう、てっきり日中戦争ものかと思っていた。

(評価:★4)

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