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[コメント] 怒りのキューバ(1964/露=キューバ)

撮影者のセルゲイ・ウルセフスキーは、『女狙撃兵マリュートカ』ではごくオーソドックスな見事な撮影を見せていたことを考えると、やはりミハイル・カラトーゾフのディレクションなのだろう。凄い映像もあるが、このディレクションは、私には合わない。
ゑぎ

 ほゞ、一台カメラのワンシーンワンカット演出。ほゞ広角レンズ。人物を追ったり、寄ったり、仰角と俯瞰も取り混ぜる。クレーンで上昇移動した俯瞰も何度かある。何が酷いって、せわしないカメラワークに加えて、斜め構図を連発するのが酷い。醜悪。

 人物はスペイン語を喋り、男性ナレーターが一人でロシア語に訳す版を見た。スペイン語を解する人々には、ナレーションがうるさい映画だろうな、ロシア語を解する観客は、この活弁のような状態をどう感じるんだろうか、と野暮なことを思いながら見た。

 キューバの自然が空撮でとらえられる冒頭。日本語だけで、キューバの歴史と現状が字幕で出る。これってどういうシステムなのだろうか?(答えは分からない)。続く、椰子の木が草花のように見える幻想的な広角ロングショットには、素直に驚く。このあと、4話構成のオムニバスに突入する。

 1話目は、果物売りの青年と恋人マリア。マリアは夜は、外国人相手の娼婦なのか。竹がつるされたクラブのダンスシーンは凄い映像。マリアの家の周辺は、貧民街。街の人々のアップ挿入も斜め構図がウザい。まともに撮って欲しい。

 2話目。サトウキビ畑の父と息子と娘の話。メラメラのエフェクトで、回想を入れる部分は目を引く。地主ら3人が馬で来るところは西部劇だ。畑と小屋の炎上をクレーンでとらえる。しかし、あくまで広角。

 3話目は、ドライブインシアターのスクリーンが炎上する場面から始まる。街で、米兵(水兵)にからかわれ、追いかけられる娘グロリアを救けるエンリケ。エンリケはスナイパーでもあるのか。狙撃シーンの演出はチンタラして、まだらっこしい。このあたりも、この監督は映画を勘違いしている、という気がする。学生のデモと放水。エンリケとグロリアとの再会とかもなしなのか。死者を担いでの行進シーンは、建物の上というか、通りの上から俯瞰で移動撮影するのだが、こゝは、どうやって撮ってるのか分からない。凄い撮影。

 4話目。山間部の家族。カストロ側の男が来て食事をする。ライフルが象徴的に使われる。やゝあって爆撃。爆撃機はオフの音で処理される。武装勢力に合流しても、ライフル銃は敵から奪う必要がある。この挿話の最期の煙幕もすさまじい画面だが、2話目の炎や3話目の放水のカットと同種の驚きであり、少々飽きも来る。

 あらためて、私は広角レンズと斜め構図が嫌いだと認識した。ズーミングと同じくらい嫌い。『鶴は翔んでゆく』(『戦争と貞操』)も、嫌らしい画面の連続だったが、本作の方がさらに奇を衒い過ぎていると感じる。

(評価:★2)

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