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[コメント] その手に触れるまで(2019/ベルギー=仏)

ダルデンヌ監督特有のBGMを一切使わない演出は、本作ではとりわけ普通さ、自然さをかもし出し、そして深く考えさせる。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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劇中、音楽が流れたのは、農場からの帰りの車の中でカーステレオからの分だけだったと思う。できるだけ音楽を使わず、普通の日常の生活、風景の中で物語をつむぐのが、この監督のやり方なのだろう。

ところで本作のラスト、唐突であったが、これは前向きな結末だったのだろうか?少年は罪を悔いて、チラシのコピーにあるような他人の尊さを知ることができたのであろうか?

少年は最初の襲撃で少年院に収監されても、心酔する導師の逮捕を知り、その復讐を果たすために、実に冷静にかつ周到に準備して2度目の襲撃を計画する。それは襲撃が成功するかどうかが大切なのではなく、ともかく信仰の大義のために、その行動が必要なのだと思いこんでいるようであった。

そして最後、宗教的な罪を犯した(と思い込んだ)少年は、まるでその罪をあがなうかのように、突発的に、再び「背教者」への襲撃を試みるが失敗し、自ら怪我をして心細さと恐怖を感じて、そして標的と目した人物に助けられて、ようやく謝罪の言葉を口にした。

その言葉が、その場限りのものではないといえるだろうか?

少年を変え、その心を駆りたてたものが、消えたのだろうか?もしかしたら怪我が癒えたら、また同じことを…ということも考えさせられてしまった。

少年をそうしてしまったものは何なのか?なぜ、そうなったのか?そういう事を深く考えさせる映画だと思った。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] ゑぎ[*]

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