[コメント] ナモの村落:駕籠から撮影されたパノラマ(1900/仏)
完璧な映画だ。ここ一二〇余年で最大の感動作である。などと云う人がいたとして、私はその者を狂人とは思わない。むしろ握手を求めるだろう。ガブリエル・ヴェールはその履歴がために記憶されるべき存在ではない。アレクサンドル・プロミオさえ凌駕し、ルイ・リュミエールにも匹敵する天才的な撮影者だ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
標題を信じる限りヴェールが(おそらくは村を出立する際に)駕籠に乗ってカメラを回しているのだろう、その後退トラヴェリングの緩やかな運動感、地面の凹凸に起因するフレーミングの断続的な縦揺れ、どういうわけかこれ自体にまず決定的に心を揺さぶられる。後景に居並んで身動きしない大人たち、左右の家並み(寝そべった牛もいる)、最後景の木々、これらの配置も惚れ惚れするばかりだ。しかし何と云っても最大の感動あるいは動揺は子らがもたらす。しっかり着衣した子もいれば半裸・全裸の子もいる。誰もが弾けんばかりの笑顔でとことこ駕籠を追いかける。この表情! なんと見事なアクション! かと思えば不意に鶏が横切る! ところがカメラに撮られたいばかりに追いかけてきていると思われた子らは、ひとりまたひとりとフレームアウトしていく。ただ駆け回っているのが楽しくなって、カメラなどお構いなしで四方八方に散ってしまったのだろうか。いや、おそらく、彼らはカメラ・駕籠と「並走」しているのだ。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。