[コメント] 鄙より都会へ(1917/米)
『誉の名手』と同年の、同じくシャイアン・ハリー・シリーズの一本。本作も、丘から谷の向こうの牧童達を映した見事な縦構図カットから始まる。ただし、本作のハリーは、冒頭から牧場主の娘ヘレンと恋仲であり、全編に亘って、二人の恋の行方が焦点となる、全き恋愛譚だ。
それだけに、牧童生活の描写は殆どなく、大きなの岩の間で会話をするハリーとヘレンだとか、馬場柵に一人腰かけているヘレンのショットだとか、ロマンスに絡んだショットで、とびっきり美しい画面がある。それは筆舌に尽くし難い、神懸かったレベルの美しさなのだ。また、彼女の移動に合わせて、舞台もワイオミングの牧場から、後半はニューヨークへ移るのだが、ラストはニューヨークのホテルでの大乱闘場面となる。後年の『荒鷲の翼』などを想起させるような大規模な殴り合いが、既にこんな最初期から描かれているのだ。この大乱闘にクロスカッティングで、街中を乗馬で駈ける牧童達が挿入される。まるでキートンのようなシュールな演出。ただし、こゝでも、フォードらしい明らかな縦構図への志向性を垣間見ることができる。
#「鄙」は「いなか」と読む。
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