[コメント] 柳生一族の陰謀(1978/日)
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根来衆の村を襲撃するあたりから俄然面白くなる(って遅いか?)。忠長を切腹に追い込み、哀れな阿国の死を見届けるところが頂点で、何もかも思い通りを成し遂げた男にほんの僅かに漂う「苦い感情」が絶妙。しかし、玄信斎を斬ってすててしまうともうそんな思いは霧消してしまうあたりの迷いのない強さにほれぼれする。鉄腸のような信念の強さとは、私利私欲からは得られない。但馬とて秘伝の剣法を守りぬくという他利のためにこそ強くなるのであろう。そういうところにこそ、使命のためには邪魔なものはすべて犠牲にしても構わないという権力者の権力者たるところがあって、錦之介の絵面はそれに耐えうる風格がある。
なので、ラスト、十兵衛に思いっきり足を救われた時の女性のような悲鳴(キンキン声だからね)での一転、生首を抱えながら集まる一同に「何も起こってはおらぬ!」と夢遊病者のようになりながらも喝を入れるところでの一転と、トントンという一転二転の展開が素晴らしいリズムを生んでいる。錦之介の大芝居と舞台中継をクレーン撮影でひいていく絵もあいまって、世界に比類のない日本の時代劇のグルーブ感(といっていいのかどうかわからないが)がゾクゾクと伝わってくる。ふだんこんな芝居に慣れ親しんでいない自分でも、かつての鑑賞体験の中の何かが刺激され、ああ、もうこういう芝居大好き!ニッポン大好き!という感興をよびさまされた。
ほんと、このラストに尽きる。あとはほとんどどうでもいい感じ。
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