[コメント] ハナ子さん(1943/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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東宝舞踊隊というダンサー達によるバレエダンスや「玩具の兵隊」を模したプロダクション・ナンバーっぽいダンスシーンもあって驚かされるのだが、『鴛鴦歌合戦』のカタルシスを求めるとカタスカシ。出来は案外荒っぽい。
とても奇異な(多分当時の観客にも奇異な)シーンがいくつかあって、例えば主人公ハナ子さん・轟夕起子(これがなかなか可愛い。)の許婚を灰田勝彦が演じているが、毎朝立派な乗馬クラブで乗馬の練習をしているらしい。彼は普通のサラリーマンとしても描かれており、この人物はいったい何者なのか、と思わされる。あるいは、中盤で出てくる大のオトナ達のかくれんぼも不思議なシーンだ。ラスト近く、灰田に召集令状が来た後、まず勤め先の社員全員で万歳三唱があり、表に出たら見ず知らずの女子学生たちも皆万歳するというのは強引な演出だろう。さらにラストは乗馬クラブの敷地で轟夕起子がデングリ返りをやったり、くるくる回る回転運動をやったり、おかめの面をつけて笑い出したりと、もう破れかぶれのような演出なのだ。確かにマキノもやぶれかぶれのような状況だったのかも知れない。ただ轟の回転運動のカッティングは『高田馬場』の韋駄天走りや『弥太郎笠』の殺陣シーンのカッティングを想起させるものがあり、これもまた紛れもないマキノ印なのである。
#主要人物について備忘
・ハナ子さんの父親は山本礼三郎で母親は英百合子。山本は老け作りと滅多に見せない飄々とした演技とで、ぱっと見、彼だと判らない。
・兄嫁が山根寿子。英百合子と山根寿子は目立たない。
・隣人では岸井明と嵯峨善兵が目立つ。岸井が女房と科白の掛け合い。
・灰田の妹に高峰秀子。かくれんぼのシーンで登場。彼女も異様に朗らかだ。多分お腹の中で「こんなのやってられないわよ」と思っていたに違いない。
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