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[コメント] 野戦軍楽隊(1944/日)

「強いばかりが軍人じゃないぞ。これが音楽の力だ」なんていい台詞が「原住人への宣撫教育」に繋げられる松竹三羽烏の喜劇。唱和する中国人たちの空々しさがなかなかのもので、笑顔満載のミュージカル仕立てってプロパガンダ向きだと納得させられる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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中国。黒塗りのクルマがクラクション鳴らして中国人かきわけて門より入り軍楽少尉佐分利信の部隊配属。部隊長小杉勇から軍楽隊組織の命下り、楽器のできる一上等兵や等兵が集められる。

訓練期間は三か月。経験者と未経験者は夫婦と呼ばれるペアを組み、声楽協会会員の上原謙はクラリネットを音楽経験のない佐野周二に教える。佐野は楽隊をやる気がなく上原を毛嫌いしているというドラマ展開。クラリネットで殴ろうとした佐野を上原が体で止めて「これも武器だぞ」と云う件がある。杉狂児はトランペットを長唄の名取の三井弘次に教えるコメディ担当。佐分利は頬膨らまして吹いてはいかんとリー・モーガでンを否定するような指導をしている。

どちらも類型的で余り面白くない。最初の練習曲は「美しき天然」誰でも知っている歌なのだった。野外練習では中国人が取り囲んで暇そうに見物している。合間に銃剣道の練習。

佐久間の読み上げる楽隊への訓示には「原住人への宣撫教育}とある。冒頭、広っぱで別の日本兵が日本の旗を中国の子供を車座に集めて教え、中盤では子供らと行進しながら証城寺合唱している。食堂で中国人の職員の泣いている赤ん坊に佐分利がクラリネットで坊やは良い子だネンネしなと吹いて、赤ん坊が泣き止む。「強いばかりが軍人じゃないぞ。これが音楽の力だ」と佐野に教える。ここが上から目線の限界はあるにしてもいい件で、佐野はやる気になり上原に教えを乞うのだった。

小杉の銅鑼声にノイズでよく聞き取れないのだが、問題のある中国の村で宣撫活動急げと云っているのだろう。佐分利はまだ無理と云うが立派に演奏できている。この手の音楽映画は楽器のマスターが早すぎるといういつもの感想。中国人相手に送迎野外コンサート。見よ東海の、と上原謙と中国娘が歌い、中国人は爆竹鳴らして大喜び。

楽隊はトラックで出かけ、軍馬で行進する歩兵隊の面々にトラックのうえから演奏して聞かせる。この行進がとても長い。川に橋かけている佐野の原隊に、佐久間は佐野を指名し、佐野は日本陸軍をソロで吹く。完成した橋をこれまたすごい数の兵隊が渡っていく。それから楽隊は盆踊りの伴奏、中国の村でどこで覚えたのか中国の唄演奏、照れる村人の李香蘭を飛び入りさせる。

そして、字幕が殆ど読み取れないのだが、ともに大東亜のために戦いますという詩を中国娘の熱心な顔アップで朗読させて宣撫工作が完成している。最後は砲撃に見舞われた楽隊が突撃に参加、村へ帰還し盛んな日の丸の歓迎を受けている。ラストは冒頭の兵隊と中国の子供たちが一緒に、♪今日も学校へ行けるのは兵隊さんのお蔭ですと、すごいこと唄っている。撃ちてし止まむ情報局国民映画。松竹。

(評価:★2)

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