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[コメント] 未知との遭遇(1977/米)

近年の成熟した大人の演出をみせる彼の作品もいいが、狂った子どもであった頃の彼の初期作は自分にとってはより魅力的だ。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







先に言っておくと、物語的ないい加減さは嫌になるほどだ。例えば数十年ぶりに地球へと舞い戻った飛行士や船員、あるいは乗客などの失われた過去とそれを奪った宇宙人の責任などは当然のこととして全く語られないし、それどころか主役のロイ(ドレイファス)に至っては家族等を捨て自らが宇宙船へ乗り込もうというのだもの。これはもう狂気の沙汰としか思えない。が、そんなことなどどこ吹く風と、最後宇宙船は悠々と空へと舞い戻っていく。こういったところは、まったくもって「?」しか残らないほどである。

が、それでもいいではないか、と思う。というか、だからこそいいのではないか、とも言ってみたい。個人的には、そのいい加減さもまた映画の醍醐味だと思うのだ。

またそんな映画ならではの醍醐味といえば、冒頭の砂嵐に始まり、エンジンがかかるプロペラ機、おもちゃを柵に叩きつける子ども、大小様々な扉や窓がパタパタと動くさま、あるいは煙突等の穴とそこから入ってくる光、突然遊び出すおもちゃやテレビ、線路の信号や郵便箱?の開閉のその音と静寂、部分的な日焼け、砂漠に浮かぶ船、インド人の大合唱、最初は意味のわからない粘土遊びがリビングいっぱいの山となるさま、ヘリコプターによる麻酔薬の空中散布やそれを逃げつつ登山するさま、音に合わせた電光掲示、あるいはただ車を走らせるということだけに様々な趣向をこらしたりと、本作のスピルバーグ演出はのちの自作である『1941』をも上回る破天荒さ、過剰さなのだが、これがまたいいのだ。

個人的には宇宙人との交流を初めて描こうとした映画などという歴史的事実より何より、まずは狂った子どもであった頃のスピルバーグの、まさに映画小僧的な演出の妙が楽しめる随一の作品として本作を推したいと思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)tredair[*] 3819695[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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