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[コメント] 悪魔とミス・ジョーンズ(1941/米)

これは大傑作だ。やはり、サム・ウッドって、常軌を逸した映画を作る。タイトルバックは、悪魔に扮したチャールズ・コバーンと天使のジーン・アーサー。天使の輪が光る。
ゑぎ

 クレジットで驚いたのは、美術のウィリアム・キャメロン・メンジースが一人一枚で出たことだ。しかし、確かに、大富豪のコバーンの邸宅内など美術は凄い。

 主な舞台は、NYのとある百貨店。コバーンはオーナーだが、従業員に顔を知られていないので、反抗分子を突きとめるために、靴売り場の新入社員として潜入するお話。ジーン・アーサーは靴の棚の下から登場する。エドマンド・グウェンが売り場主任で、もう一人の同僚にスプリング・バイイントン。そして、組合のリーダーにロバート・カミングス

 大笑した場面は沢山あるが、まずは、コバーンが自分の営業成績のために、執事のS・Z・サカールに、サクラになるように命じ、サカールが靴売り場に連れて来た生意気な少女がケッサクだ。この娘に靴を履かせようとするシーンが、全く狂気的な面白さなのだ。あるいは、店の屋上での夜の集会の場面。アーサーが、コバーンのことを、この歳になっても靴売り場の新米の職にしか就けない、貧民だと決めつけて演説する。こゝも笑うが、同時に上手いシーンだ。あと、コニーアイランドのビーチの人出の多さの見せ方(画面造型)にも唸るのだが、この辺りから描かれる、コバーンとバイイントンとの恋愛も捻った見せ方だ。バイイントンが、相手はお金持ちじゃない方がいい、と云うものだから、悩んでしまうコバーンがいい。

 クライマックスは、アーサーとカミングスとバイイントンが代表となり、経営陣と協議するシーン。3人にとっては、コバーンも労働者側だと思っているが、役員全員が、コバーンの発言には常に忖度するので、3人が目を丸くするという場面だ。こゝもメチャクチャ面白い。しかし、面白いだけでなく、貧富の差や、政治的主義を越えた、真の正義を描いて(描こうとしていて)、至極痛快でもある。本作は、コバーンにとっても、サム・ウッドにとっても、代表作と云うべきだろう。

(評価:★5)

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