[コメント] 水を抱く女(2020/独=仏)
ファーストカットから目が釘付けになる。カフェの屋外席にいるウンディーネのバストショットから、いきなり始まり、数カット、男との無言の切り返しがあるのだが、これがいい。
続いて科白のある切り返しになるが、こゝで「私を捨てるのなら殺す」と云う、この科白も効く。彼女は住宅都市開発省の展示物の説明員。上階のロッカールームから展示室へ降りる階段の途中で、窓があり、カフェの庭の席が見える。展示物の説明に結構尺を取る。ジオラマ模型にズーミングしたりする。そして、カフェに戻った彼女が、何やら霊的な力による、観賞魚の水槽の破壊に立ち会うことになる。こゝまでの畳みかける冒頭の演出がいいのだ。ベルリンの都市計画を解説する部分の明晰な演出と、スピリチュアルな演出との共存。
以降は、水槽破壊の際にウンディーネと一緒にいた、潜水作業員クリストフとの、それこそ、スピリチュアルな恋愛譚になるのだが、湖中のシーン(及びプールのシーン)は、確かに幻想的ではあるが、生活場面は、あくまでも普通に切れの良い演出がなされているのも、良い対比となっている。中でも、移動手段として、自動車ではなく列車が用いられ、駅や駅のホームが、度々主人公たちの背景になるのが、画面に変化をもたらしている。
《以下はネタバレ注意》
そして、エンディングはどうだろう。アンデルセンの「人魚姫」同様の結末であるとも云え、落ち着きのいい、常識的な帰結なのかも知れないが、私としては、妊娠した女を一人ポツンと残したまゝ、閉じてしまうぐらいの冷たい悲劇の方が好みだ。その方が映画的というか、幻想譚らしいという感覚だ。ただし、それでは、ウンディーネ側から云うと悲劇にならない、という見方もできるかも知れないが。
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