[コメント] 逃げた女(2020/韓国)
遠くに臨む山。飲食物(焼肉、パスタ、リンゴ、酒、珈琲)。人間関係の変化の話題と突然の男性の来訪。ガミ(キム・ミニ)が立ち入ることの出来ない別階の部屋。「愛する人と離れるべきではない」と結婚以来5年間、彼女から離れることのなかった夫の初めての不在。
ガミ(キム・ミニ)が再会する三人の女たちとの間に、そんな掴みどころのない話題や事象が反復される。このとりとめのない話のキャッチボールに、彼女たちはいったいどんな意味を見い出し、どのくらい自覚的に時間を費やしているのだろうか。そんなことを思ってしまう会話劇だ。
物語は進展(成立)せず、観客は彼女たちのなかに立ち入ることができない。蚊帳の外に置かれた観客(私)は、物語とは「それぞれのヒトの内側」にしか存在しないのだということを自覚させられる。物語なんて他者を利用して、相手の同意など得ずに、自己満足のために作り出すものでしょ、というホン・サンスの薄ら笑いが目に浮かぶ。
終盤、劇中映画として何度も海が映し出される。人と人のつながりの虚構性(あやふやさ)を象徴するような、誰もいない海岸に寄せて返す波の寂寥感。饒舌な会話が生み出す饒舌な孤独。そんなフレーズが頭に浮かんだ。
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