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[コメント] 予期せぬ出来事(1963/米)

原題を直訳すると「VIPたち」。クレジットバックで、本作のVIPたちは、日常生活や仕事場でのショットで紹介される。
ゑぎ

 それは、エリザベス・テイラーリチャード・バートンはパーティ場面。ルイ・ジュールダンはカジノで。マーガレット・ラザフォードはお城の前。オーソン・ウェルズエルザ・マルティネリは撮影所の中。ロッド・テイラーはトラクター工場で、マギー・スミスはオフィスでの執務風景。

 これらの主要キャストが、ロンドン、ヒースロー空港のVIPラウンジを中心に、場面への入退場を繰り返す映画。夜を挟んだ丸一日のお話。邦題の予期せぬ出来事というのは、皮相な意味では濃霧による旅客機の出発遅延、さらには欠航を指しているのだろうが、各登場人物にとっては、それ以上の様々な予期せぬ出来事が起こる、という作劇だ。悪くない邦題だと思う。

 それぞれに早く出発したい理由があるのだが、詳細は書かないが、多くはお金の問題だ。映画監督のウェルズは税金の問題(マルティネリはウェルズのお抱え女優という感じ)。ラザフォードは公爵夫人で城の維持費。中小企業の社長であるロッド・テイラーは会社買収の危機(マギー・スミスは彼の秘書でひそかに彼を愛している)。

 そんな中で、お金の問題が直接的なモチベーションではない3人が主軸のプロットを担っていると云えると思う。すなわち、リズ・テイラーとバートンとジュールダンだ。リズ・テイラーとバートンは夫婦。バートンは有名な実業家で、2人は自家用ヘリで飛行場に到着するような人たち。しかし、リズ・テイラーは、ジュールダンとNYへ駆け落ちするつもりなのだ。ジュールダンはプロのギャンブラーか。リズ・テイラーは自宅に置手紙を残しており、本来、NYに到着した頃、バートンがそれを読むと想定していたのだが、上で書いたように飛行機の出発が遅れたため、拳銃を持ったバートンが空港へ乗り込んで来、3人の対決場面が繰り広げられるというワケだ。

 と書くと、なんか面白そうなプロットだと思うのだが、この3人のキャラが皆いい人に見えないのが複雑な感覚になるというか、誰も応援したいと思えない造型であることが宜しくない点だろう。画面的には、鏡を使った暴力シーン(リズ・テイラーが鏡で手をケガするシーン)なんかも悪くないとは思うのだが。むしろ、この3人のプロットと、ロッド・テイラー及びマギー・スミスのプロットが接触する構成が本作の最も良い部分かも知れない。

 尚、ラザフォードは本作でオスカー受賞だが、こういう老女のコメディパートを英米人は過剰に面白がるのだなぁと改めて感じる。『大空港』のヘレン・ヘイズとか。また、ウェルズとマルティネリは完全に、にぎやかし、という感じの扱いだが、それにしても、マルティネリは可哀想じゃないか。これではアホな女優にしか見えない。彼女にワン・シーン、ワン・カットでもいいから、良い画面を与えることができていれば、この映画の価値が全然違うものになったと、私なんかは思ってしまう。

(評価:★3)

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