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[コメント] 花の特攻隊 あゝ戦友よ(1970/日)

桜花という特攻機の話で、普通の特攻よりも格下に扱われた自虐が関係者を取り巻いている描写など興味深く観られた。素晴らしいのはオトコ追いかけて特攻機に同乗しようと暴れる梶芽衣子で、この名女優の演じた数多の無茶のなかでも傑出。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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桜花という特攻機の話で、冒頭からウルトラマンみたいな特撮でジェット機が登場するのに驚かされる。本作の美点はこの特攻機の紹介。最初は丹波哲郎が開発している。無線誘導の「ドイツのV1号みたいな」と模型を説明しており、南原宏冶の飛行兵が「我々も飯の喰いあげですな」と云っているのだが、開発が間に合わず「人間を乗せるしかありません」「回天のように人間爆弾にするのです」と森塚敏の広田博士が科学的に淡々と説明して、丹波が天を仰いで方針転換。

特攻機で事故起こした杉良太郎を指導員になった南原が採用して説明。木製一人乗り、頭に1200キロの魚雷級の爆薬搭載、高度3千、目標2万メートルで母機から切り離し、あとはロケットで敵を探しながら飛んで突撃。通信機はついていない。「一人前の飛行機乗りがこんなものに乗れるか」前回作戦は発射のまえにグラマンに見つかって撃墜。

俺の一家に案内しようとなぜか地下壕に飛行隊は屯所を構えている。はぐれ者だったのだろうか。ここで杉良は三ツ木清隆と再会し、彼は桜花には離陸も着陸もありませんし、お前らは消耗品だと教育されてきましたからと陽気に志願理由を答える。杉良の出撃にはインディアナポリス搭載の新型爆弾を迎え撃つという大義が与えられているが、これは本当だろうか。母機の下から分離発進されている。

杉良は軍まで押しかけた和泉に云う。「ぼくも今でも君が好きだ。だがそれ以上に、君たちが生きているこの美しい日本の国が好きだ。この国を護るためには俺は喜んで命を捧げるつもりだ」。石原慎太郎はパクったに違いない。そんな比較はあるものではないだろう。杉良は和泉に向き合わずそっぽを向いて語るのだから、本意でない発言というニュアンスもあるのだが、悪く云えば八方美人な演出である。

杉も和泉も年齢が高すぎるのではないのだろうか。和泉の弟役の三ツ木が適任なのだろう。説明の多い台詞は興醒めだし、説明だけで心中しちゃう浜田光夫の件など簡単過ぎる。梶芽衣子とか、最後まで句をひねり出そうとしている沖雅也とか適材適所のキャラで、いい演出なら冴えただろうにと惜しまれる。

杉良太郎の同題の歌謡映画で、他にも♪僕が死んでもお母さんみたいな演歌で突撃。杉良がフロントパネルに飾る写真が和泉ではなく母親の中畑道子というのは主張があった。敗戦はその二日後と紹介される。知覧という地名は当時紹介しにくかったのか字幕では「南九州特攻基地」と書かれている。「花の特攻隊」が赤で大文字「あゝ戦友よ」は白で下に小さい副題扱い。

(評価:★3)

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