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[コメント] 少年の君(2019/中国=香港)

たいへん力のある映画だが、冗長に感じられる描写、インサートが多い。特に、受験戦争イメージの執拗なインサートは、うるさい。例えば、答案の管理の描写まで挿入しなくてもいいのでは、と思う。
ゑぎ

 イジメ告発以上に受験制度批判が強調されているように思える。というか因果関係を描きたかったのか。エンドロールのメッセージは直截的だが、作劇の仄めかしは、理屈っぽく説教臭い、と私には感じられた。しかし、本作が、映画として、とても感動・興奮させられるのは、あくまでも、チェン・ニェンとシャオベイとの関係性、心を通わせるところなのだ。環境のお膳立ては必要だが、本作の描き方はノイジーに感じる。

 冒頭、教室でもイヤホンをして勉強しているチェン・ニェンから、廊下へカメラが出て、手すりの下を見る生徒たちへ、ぐるっとカメラが回り込むが、なんかカクカクした動きだった。このカクカクした動きは、この後も、何回かチェン・ニェンの住居周りのシーンでも出てくる。ワザとか。学校のシーンは全般に平板に感じたが、シャオベイに出会ってからの、特に夜のシーンはいいと思った。バイクにノーヘル二人乗りで高速道路を走るカットもやっぱり気持ちがいい。ホウ・シャオシェン『百年恋歌』を思い出した。毎日の登下校を尾行するように守るのは、嘘っぽいが。

 また、二人の(二人が引き合わされる)聴取場面と、接見室の場面は見応えがあった。終盤に、これを持って来るのは上手いと思う。こういう場面では、アクリル板をどう演出するか、注意して見るのが癖になっているのだが、何度も切り返しながら、全てのカットで、アクリル板に顔を映し込んでおり、つまり、切り返しても、正対する二人の顔の表情が認知できる画面に造型しており、これも見る者の胸に迫る効果に奏功していると思った。尚、エピローグはイマイチと思う(噓っぽい)。

#備忘。アバンタイトルは、教室で英語を教えるチェン・ニェン。「This was our playground.」と「This used to be our playground.」「used to be」は喪失感。

(評価:★3)

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