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[コメント] アナザーラウンド(2020/デンマーク=スウェーデン=オランダ)

少しだけ赦されたいおじさんたちのために。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







酒を飲むことで緊張がほぐれ恐怖心が遠のき、日ごろ思っていてもなかなかできないことを大胆にやれたり、まるで自分じゃないような力が発揮できたり、、、そして後半は、思いもよらない展開どころか、思った通りの展開になっていくという、だから何っていう、この話の何が面白かったんだろう? 

魅力は2つ。前半酒の力を得て、物事がうまくいき始めるエピソードの痛快さ。そして後半の結局は失敗していくおじさんたちの哀愁ただよう姿に対する共感。そしてラストの、羽目を外して周りに迷惑をかけ、大切な友達まで失って、もう二度と酒なんか飲むものか、と教訓のようになるのではなく、でもやっぱり今日だけは少しだけ赦してよ、と酒を浴び踊り、海へドボン。こんな酒飲みの自己弁護のようなラストのシークエンスが感動的であるのは、彼らが胸を痛めてきたものが、自分のことではなく、生徒や家族や飼い犬のことだったりという、その真面目さがミソなんだろうな。思うにこの映画、いろんなことをガマンしてきているうちに、人生も半ばを過ぎたおじさんたちに一番刺さるような気がする。酒の力を借りて得た自分の姿はかりそめの姿だったのかも知れないけど、それによって何人かの人を救ったことも事実じゃないか、そう俺たちの人生を責めないでくれよ、っていう男の自己弁護。

女は現実の過酷さに耐え、男は理想との乖離に耐えようとする。哀愁は後者にしか発生しない。哀愁は男のもの、男のロマンなんですね。女の校長や主人公たちの妻たちからすれば随分甘っちょろく見えるような気もする。

気がする、気もする。そんな感想になってしまうのは、私が酒で何かを紛らすことを必要としないタイプの人間だからかも知れない。第一酒が弱いし、したがってそんなに好きでもない。そのかわり主人公たちのようにがまんすることをしないから、どこかのなにかに赦しを得ようとすることもほぼ皆無なので、あまりに他人事であった。スーパーで生の鱈が売ってなく、釣りを始めだしたところでマーティンがまず蟹を餌にするために獲ろうとしだすとこが一番共感できた。酔うと正常な判断ができなくなる、そのことくらいしか体験したことがないからだった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)緑雨[*] jollyjoker ぽんしゅう[*]

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