[コメント] 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021/英=米)
舞台は世界遺産の町マテーラへ。過去を燃やす、という本作のテーマが早々に具現化されて描かれ、ヴェスパー(エヴァ・グリーン)の墓地から続く、古い街並みでのカーチェイスは文句なく興奮する。アストンマーチンの装備の見せ方も実に楽しい!
続く見せ場、キューバのサンチャゴのシーン。現007のラシャーナ・リンチもいいけれど、3週間の速成工作員、アナ・デ・アルマスのアクションが最高じゃないか。『ナイブズ・アウト』でダニエル・クレイグに引き抜かれたのだろうか。「いい腕だ」なんて誉めるのだから。全編で彼女の出番は、尺の割には一番のパフォーマンス、最も印象に残る、もうけ役かも知れない。というか、正直、私のように、アルマス目当てで本作を見る(007ファンではない)映画ファンも多いわけで、この特別出演的待遇にはとても満足。
その後も、ブロフェルド−クリストフ・ヴァルツとの対決や、森の中の家(冒頭の家)から、セドゥの娘を連れて脱出するシーケンス、ランドローバー、バイク、ヘリまで加わってのチェイスシーンなど、なかなかの見せ場を繋ぐのだ。
ところが、後半、日本と揉めているロシア領の島へ舞台が移ってからが、まさかの失速だ。ま、この荒唐無稽さが、嘘っぽいが楽しいとも云えるのだが、日本庭園の砂紋のイメージと、毒々しい植物のミスマッチが不快だし、使用人たちは、昔のハリウッド映画の日本人=庭師イメージが抜けてないように感じられてしまった。ラスボスのラミ・マレックのお喋りも冗長だ。
ただ、ラスト近くの階段通路の銃撃戦かつ肉弾戦の長回しは見事です。鉄のドアが、ワンカット内の手榴弾の爆発で穴だらけに変化していたのは、CGだろうが、このカットの終結部分で、敵と一緒に背中から階段を落ちるのは、クレイグ本人がやっているように見える。なのに、満を持して現れたマレックが、生身の格闘スキルは全く持ち合わせていない(いや披露しなかっただけなのか)、という演出には、呆気に取られてしまいました。
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