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[コメント] 映画大好きポンポさん(2021/日)

アカデミー賞授賞式セレモニーのイメージで始まる。この映画でも、オスカー(みたいな賞)が、動機づけとして機能しているように描かれている。
ゑぎ

 まず、このアカデミー賞に対する暗黙の了解のような前提が、私には首肯できない。なんなら、権威主義的だとさえ思う。こんなことを思わせるのも、全編に亘って、細かな気になる点、違和感がいっぱいあるから、かも知れない。

 まず、ポンポさんのルックスのミスマッチが上手くいっていると思えない。漫画だと思う。真の主人公であるジーンと、ナタリーも含めてこの2人の消極性というか極端な卑下と、その裏にある才気の対比も中途半端だ。2人がアジア人的ルックスに見えるのも、ひっかかる(というか、私の認知バイアスなのか)。ルックスに関しては、明らかに、戦略的にこういう選択がされているワケだから、私には合わなかった、ということになる。

 また、言及される実在の映画は、『ニュー・シネマ・パラダイス』だけだったと思うが、ポンポさんは、長いから嫌いというようなことを云う。ジーンは、好きな映画を長く見ていたいと。90分以内の尺に収める志向は美点だけれど、それを映画として、こゝまで大きく位置付けるのも、私はちょっと白ける。70分に満たない傑作もあれば、3時間を超える傑作もある(そんなこと当たり前)。あるいは、女優が魅力的に撮れればほとんどOK、みたいな、ポンポさんのセリフも、真理だと思いながら、オッサンみたいな(私みたいな)こと云う、とも思ってしまった。

 あと、この映画、撮影及び編集フェーズの重要さを印象付け、脚本については、その生みの苦しみのようなものは全く描かれない。ポンポさん一人の才能が所与の条件として提示されているだけだ。撮影現場でも編集フェーズでも、脚本は、その通り撮影されないし、繋がれるわけではない、ということの強調は、本作の美点だと私は思っているのだが、ただし、編集フェーズの描きようには違和感が大きい。明らかに脚本通り撮影したシーンを、どんどんバッサリ切っていくのが、現実的かどうかなんてことは、どうでもいいが、ひとえに、切りまくるイメージが大げさ過ぎる、うるさ過ぎるのだ。大げさ過ぎるから、もともと脚本が悪かったからじゃないのか、とか、即興演出を成立させる段取りが出来ていなかったのが悪いんじゃないか、とか下らない理屈が思い浮かんでしまう。

 尚、繰り返しのようになるけれど、撮影現場で、霧や雨の画面造型や、ジーンが照明に時間をかける、といった光の扱いの描写が強調されるのは、私は本作の良いところだと思っています。映画「マイスター」が傑作になったのは、あくまでも、ポンポさんの脚本を大胆に改変した、撮影及び編集フェーズの成果なのです。

#ポストプロダクションにジーン一人しか関わっていないみたいな描き方も違和感がありますが、それは選択と集中でしょう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)disjunctive[*] けにろん[*]

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